先天性心疾患

動脈管開存症(PDA)

犬の先天性心疾患としては最も発生頻度が高い病気です。

病気の概要

どんな病気なの?
動脈管開存症(PDA : Patent Ductus Arteriosus)は、犬で見られる先天性心疾患の中では最も発生頻度の高いものとしれ知られています。

動脈管は胎子が子宮内で発育するために必要不可欠で、この血管があることで胎子循環が成立しています。胎子の頃は肺呼吸ではなく、母体から酸素供給を受けているため肺の血管は閉じており、肺に血液を送る代わりに動脈管を通して大動脈に血液が流れ込み、全身へと送られます。

しかし、出生後は大きく状況が変化します。肺呼吸が始まり、肺の血管が開くことで大動脈と肺動脈の圧力が逆転します。そのため、動脈系と静脈系を完全に分断しなくてはいけないため、動脈管は通常生まれた後にすぐに閉鎖することになります。しかし、この血管が開放されたままの状態になってしまうことがあり、大動脈から肺動脈に向かって多くの血液が流れてしまいます。そのために様々な症状(疲れやすい、呼吸が苦しい)を発症する場合があり、動脈管開存症と呼びます。




動脈管開存症になりやすい犬種・猫種は?
トイ・プードル、マルチーズ、チワワ、コリー、シェルティ、ポメラニアン、ミニチュア・ダックスフンドなどが好発犬種として知られており、多くは出生後の健診時に大きな連続性の心雑音が聴取されることで見つかります。猫での発生はあまり多くありません。




動脈管開存症の診断と予後

確定診断や重症度の変化は主に心臓超音波検査や胸部レントゲン検査にて行います。

PDAは70%が1歳未満で心不全を発症し、積極的な治療を行わなかった場合、診断からの一年生存率は35%と報告されています。しかし、外科手術を行うことで良好な生命予後を得ることができ、生存期間中央値は11.5年以上と報告されています(寿命を全うできる可能性が高い)。

ただし、この病気は重度に進行すると肺の血圧が高くなる肺高血圧症という状態に陥り、血液の流れが「大動脈 → 肺動脈」から「肺動脈 → 大動脈」というように逆転してしまう(アイゼンメンジャー化)ことがあり、手術不適応の状態になってしまいます。そのため、診断後にはなるべく早期に閉鎖する必要があります。





動脈管開存症の治療
手術には開胸して動脈管を結紮する方法と、カテーテルによるACDO(Amplatz Canine Duct Occuluder)やコイルを用いた塞栓術があり、どちらもメリットやデメリットがあります。カテーテルはある程度の体重がないと行えないため、成長を待つ必要がありますが、重症度によって待つことのできない子に関しては開胸術を選択せざるを得ない場合もあります。どちらの術式の適応が良いかまずは当院へご相談ください。







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