先天性心疾患
肺動脈弁狭窄症
犬の先天性の心臓病の中で2番目に多いとされており、全ての先天性心疾患の中で20-30%程度と言われています。
病気の概要
どんな病気なの?
全身を巡って帰ってきた血液が右心房へと注がれた後、右心室から肺へと血液を送る血管のことを肺動脈といいます。肺動脈弁狭窄症(PS : Pulmonic Stenosis)は肺動脈に存在する血液の逆流を防ぐ肺動脈弁が生まれつき狭く、場合によっては肺動脈そのものが細い状態となっています。
肺動脈弁狭窄症では血液が流れにくくなり、右心室から肺へ血液を送り出す際に持続的に右心室に大きな圧力がかかります。そのため右心室の筋肉が圧力に負けないように分厚くなります(右室心筋の肥大)。
狭くなった肺動脈を流れる血流の速度は非常に速く(正常の8倍程度にまで達することも)、肺動脈への負担が肺動脈拡張を引き起こすことがあります(狭窄後部拡張)。
肺動脈弁狭窄症になりやすい犬種・猫種は?
犬の先天性の心臓病の中で2番目に多いとされており、すべての先天性心疾患の中で20~30%程度と言われています。チワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、ビーグル、Mシュナウザー、イングリッシュブルドックやフレンチブルドック、ボクサー、マスチフ、サモエドなどが好発犬種として知られており、雄に多く発生する傾向にあります。
多くは出生後の健診時に大きな収縮期雑音が聴取されることで見つかります。猫での発生は犬より低く10%程度と報告されています。確定診断や重症度の評価は主に心臓超音波検査や胸部レントゲン検査にて行います。
肺動脈弁狭窄症の症状
重度の肺動脈弁狭窄症でも無症状(または症状に気が付かない)なことが多く、突然亡くなってしまうことの多い病気です。運動不耐性や発育不良が生じることもありますが、病変が重度の場合、失神がみられたり、長期間に渡って心臓に負荷がかかった結果、心不全を起こし、呼吸が苦しくなったり、お腹に水が貯留してしまうこともあります。
肺動脈弁狭窄症の重症度評価と治療
肺動脈弁狭窄症は重症度によって次のような治療が推奨されます。
肺動脈弁狭窄症のカテーテル治療(バルーン弁口拡大術)
肺動脈弁狭窄症は狭窄が発生する位置により、弁より下(弁下部)、弁部(弁性)、弁より上(弁上部)の3つに分類されますが、多くは弁性狭窄です。カテーテルによるバルーン弁口拡大術は主に弁性狭窄の場合に選択されます。また、弁性狭窄には type A と type Bがあり、前者はバルーン弁口拡大術の効果が期待でき、肺動脈弁に比較的可動性があり収縮期にドーム状になります。
それに対し、後者の肺動脈弁には重度な肥厚がみられ可動性が少なく、またそもそもの肺動脈の太さ自体が狭いことが多く、バルーン弁口拡大術を行なってもあまり効果が得られないか、再狭窄のため効果が一時的であり、あまり適していないと言われています。
同時に卵円孔開存が認められることが多いため、バブルコントラストエコーにより短絡血流の存在を確認します。
カテーテル治療対応施設へのご紹介
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