失神・ふらつき

犬の肺高血圧症

肺の血圧が上昇する病気です。

病気の概要

どんな病気なの?
体に血圧があるように、肺にも血圧があります。肺の血圧は体の約1/5~1/6程度ですが、肺高血圧症では肺の血圧が上昇し、重度の場合には体の血圧以上に上昇してしまうほどです。


原因はさまざまで、肺高血圧症のガイドラインでは6つのカテゴリーに分類されています。しかしながら、原因の特定はしばしば困難であり、複合的な場合もあります。




肺高血圧症の症状
肺高血圧症は初期に「疲れやすい」「息切れ」といった症状が現れ、進行すると低酸素血症が顕著になりチアノーゼ(舌や粘膜が紫色になる)が観察されたり、「ふらつき」や「失神」が見られるようになります。

呼吸器疾患の併発(肺高血圧症の発症・悪化要因となる)や心拡大の影響で咳をする子も多くみられます。

末期には右心不全となり、腹水や胸水が貯留したり、肝臓が腫大がみられます。

犬や猫では初期症状に気がつくことは難しいですが、「散歩の時にあまり歩かなくなった」や「寝ている時間が増えた」といった「易疲労性」の症状で受診される方が多くいます。また、「失神」がみられて来院するケースも多くいらっしゃいます。

猫では肺高血圧症は比較的まれな疾患です。



肺高血圧症の診断
診断や重症度の評価には専門的な知識と技術を必要とします。

胸の右側で心雑音が強く生じていることが多く、頚静脈の拍動がみられることがあります。

超音波検査では右心系の負荷が認められ、多くの場合は中程度~重度の三尖弁逆流が観察されます。

重度の場合、肝腫大、後大静脈や肝静脈のうっ血所見や胸水・腹水が観察されることもあり、お腹が膨れてきます。






肺高血圧症の治療
肺血管拡張薬を用いて内科的に治療を行います。

シルデナフィルやタダラフィルといったPDE5阻害薬、ベラプロストなどのプロスタサイクリン製剤を主に使用します。

原因疾患がはっきりした場合は、その治療もしっかりと行います。

原因の特定が困難な場合も肺血管拡張薬の投与を行うことで症状の改善がみられるケースが多くあります。


グループ2の場合は肺血管拡張薬の使用にとても注意が必要ですが、しっかりと検査を受けていただくことで診断可能です。


肺高血圧症の予後
肺高血圧症の予後は原因疾患によってさまざまですが、重度の場合は長期的な予後は悪いと言われています。

記事執筆者

荻窪桃井どうぶつ病院/杉並動物循環器クリニック 院長
(獣医循環器認定医)

木﨑 皓太

2012年 北海道大学獣医学部 卒業
2018年 獣医循環器認定医取得
一般社団法人LIVES 理事、循環器科
東京都、神奈川県、群馬県、埼玉県、愛知県、大阪府の多数の病院で循環器診療を担当