不整脈

ホルター心電計検査

「失神」してしまう子はぜひ一度ご相談ください。

突然ですが「ホルター心電図」ってご存知でしょうか?
あまり導入している動物病院は多くないかもしれませんが、簡単に言うと、長時間記録のできる心電図です。
どういう子に受けて欲しい検査かというと、タイトルにあるように突然の「失神」「ふらつき」などの症状のある子たちです。
小型の心電図を胸につけて固定しておくだけで、最長1週間くらいの心電図の記録を撮り続けながら、リアルタイムかつ遠隔でスマホで確認することができます。(少しだけ胸の毛を刈らせていただきますが、従来のものより遥かに狭い範囲です)




この心電図の記録と、ご家族にご協力してもらって記録する「行動記録」を照らし合わせて、「◯時◯分に食事」「◯時◯分に散歩」「◯時◯分に投薬」「◯時◯分に失神」というタイミングの心電図から診断をくだします。




飼い主さんからはよく「発作」という表現で相談を受けることもあります。


しかし、「失神」と「発作」は実は違うもので、獣医師はおおまかに、心臓の問題なのか、脳神経や代謝(血液検査でわかるような)の問題なのかと分けて考えます。


<失神・ふらつき>
脳に血液(酸素)が送られないことで急に力が抜けて意識を失ったりふらついたりします。
不整脈、神経調節性失神、肺高血圧症などの病気が原因となります。


<発作>
原因は様々ですが筋肉の動きが制御できずにバタバタしたり体が突っ張ってしまったりします。
てんかん発作などの脳神経の問題や、低血糖発作、肝臓病による肝性脳症、低カルシウム血症などがあります。


ですので、ホルター心電図を使用する前には、まずは一般的な身体検査、血液検査、レントゲン検査、心電図検査、血圧測定、超音波検査などを受けていただく必要があることがほとんどです。


とはいえ、実は獣医師もこれを混同してしまっていることが多く、せっかくいろいろな検査をしてもらっていても正しい診断に辿り着けないケースが多く見られます・・・さらに、獣医師は心電図が非常に苦手な傾向にあり(もちろんすごく得意な先生もいっぱいいますが!)、心電図の取り方から間違ってしまっているケースがよく見られます。



<以下が当てはまる場合には、ぜひ当院に一度ご相談ください。>


・急に失神したり、ふらつくことがある。
・失神と発作の区別がつかない
・疲れやすい
・不整脈と診断された・・・房室ブロック、洞不全症候群、心房静止、上室(心房)期外収縮、上室頻拍、心房細動、心室期外収縮、心室頻拍など
・拡張型心筋症やボクサー心筋症(不整脈源性右室心筋症)が疑われている
・神経調節性失神が疑われている



神経調節性失神とは?☆


特定の行動の後に失神やふらつきが認められるものです。
例えば咳、飲食、排便・排尿時、散歩前の嬉しさの表現や吠えるなどの興奮時です。



↓↓実際の検査の様子とスマホの観察画面↓↓



これらの診断には問診もかなり重要です。


<診察の時に以下をお伝えいただけるとスムーズです。>
・お家での様子や飼育環境
・症状が発症する時の引き金になっていそうな行動や出来事
症状が出た時の動画(これがあるとどのような症状かがとても伝わりやすいです)
・症状が出た後の様子など


より細かく把握していただけているほど診断に近づきます。


房室ブロックの場合、特に犬ではすぐに治療しないと亡くなってしまうケースもあるため、心配なことがあればなるべくお早めにご相談ください。

犬の高度房室ブロックおよび第3度房室ブロックは無治療の場合,3年間の観察中の突然死の割合は42%であり,その多くが1ヶ月以内に起こるとされている。ペースメーカ植込み術を行った場合,生存期間は有意に延長するため,高度および完全房室ブロックの治療の第一選択はペースメーカ植込み術である。
Schrope D.P., Kelch W.J., et al. (2006): Signalment, clinical signs, and prognostic indicators associated with high-grade second- or third-degree atrioventricular block in dogs: 124cases (January 1, 1997 – December 31, 1997). J. Am. Vet. Med. Assoc; 228:1710-1717.


必要な場合には早急にペースメーカ植込み術を実施可能な施設をご紹介いたします。

↓↓ 犬の高度房室ブロックとペースメーカ植込み術 ↓↓