犬の心疾患

犬の拡張型心筋症

心臓が肥大して、力強く収縮できなくなる原因不明の病気です。

病気の概要

どんな病気なの?

「心拡大および瀰漫性収縮障害を特徴とする原因不明の心筋疾患であり、そのような変化を引き起こしうる基礎疾患ないし全身性の異常に続発し類似した病態を示す「二次性心筋症」に該当する疾患が認められない」と定義されています。

つまり...心筋がペラペラになって心臓が大きくなっていき、力強く収縮できなくなる原因不明の病気です。そのため血液を全身へ循環させることが上手くできなくなり、疲れやすくなったり、肺水腫を起こしたりします。


どんな子での発生が多いの?
ドーベルマン、ポーチュギーズ・ウォータードッグ、アイリッシュ・ウルフハウンド、ニューファンドランド、グレート・デン、ボクサー、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、アメリカン・コッカー・スパニエルなどに多く発生します。

雄での発症のほうが多く、発症年齢は4~10才と比較的若く、2才程度で発症することもあります。特にポーチュギーズ・ウォータードッグでは1才以下で死亡してしまうほど重症となることがあります。




診断方法と治療

心臓超音波検査が主な診断方法ですが、レントゲン検査や心電図検査なども重要な検査となります。特にドーベルマンでは以下に述べる致死性の不整脈による突然死が多く認められるため、無徴候でもホルター心電図の実施が推奨されています。


運動不耐性(易疲労性)、うっ血性心不全による肺水腫・胸水・腹水、失神、ふらつきなどの症状が認められます。不整脈(心房細動や心室期外収縮など)もが認められる場合もあり、3割程度のドーベルマンでは致死性の不整脈による突然死が認められます。

症状がある場合には主に強心剤や利尿剤を用いて治療を行いますが、一般的に心不全徴候がある症例の予後はあまり良くなく、心房細動の症例の予後はさらに短いとされています。

症状のない「occult DCM(オカルトDCM)」の状態からピモベンダンを開始することによって、心不全発症まで(症状が出るまで)の期間が有意に延長したとの報告があります。



記事執筆者

荻窪桃井どうぶつ病院/杉並動物循環器クリニック 院長
(獣医循環器認定医)

木﨑 皓太

2012年 北海道大学獣医学部 卒業
2018年 獣医循環器認定医取得
一般社団法人LIVES 理事、循環器科
東京都、神奈川県、群馬県、埼玉県、愛知県、大阪府の多数の病院で循環器診療を担当